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誰も居ない真っ白な世界で、耳を澄まして空を仰いだ。
「ラ、ピス…?」
何で、ここに居るの?
声がした。
でも、違う、あの人じゃ、ない。
でも、知ってる声だった。
無意味に期待に膨らんだ胸が、張り裂けそうに悲鳴を上げる。
振り向けば、濃い霧の向こうに黒い人影が見える。
様子を窺うような動きをして、その場に佇んでいる。
来ないで。
本能がそう言っている。
今はまだ、会ってはいけない気がする…。
「ラピス?ラピスなのか?」
もう一度、確かめるように声が聞こえた。
間違いない、この声の持ち主を、自分は知ってる…。
それに、ここを知っているのは、自分と、あの人と…。
「あ!待って、おい!」
声を聞いたとたんに、走り出してしまった。
会いたくない。逃げなきゃ。
今は、会いたくないの。
来ないで。
遺跡の奥深くへと、走り込む。
何だかすごく胸がざわついて、落ち着かない。
「待て!ラピスなんだろ!?俺だって!待ってくれ!」
足音と共に、声が近付いて来る。
追い付かれちゃう…。
思ったのもつかの間、手を掴まれて止められた。
「やっぱり、ラピスだ…。」
声の持ち主は安堵したように、自分の顔を見て呟いた。
目なんて、合わせられる訳がない。
早く、ここから立ち去りたい。
その思いで手を振りほどこうとするが、力じゃ流石に敵わなかった。
「待てよラピス、頼むから話しを聞いてくれ!」
肩を掴まれて、嫌がおうにも目が合わさる。
ローブを下ろしたその顔に、見憶えがない訳がなかった。
「ジェ、イド…。」
小さく名前を呟いた。この名を呼ぶのは、何年ぶりだろう…。
「良かった、生きてた…。無事だったんだな…!」
思わず、抱きしめられていた。
痛い位に、手に力が入ってた。
「ご、ごめん、会うの久しぶりで、嬉しくってさ…。」
ばっと手を離して、顔を見る。
「ずっと、探してたんだ。」
数年ぶりに見る顔は、幼さが少しぬけ、しっかりとした顔つきになっていた。
名前はジェイド。
幼馴染、に当たる人で、解散したサーカスの団員。
どうして、ここにジェイドがいるの?
それに、探してたって、どう言う意味なの?
言い知れない不安が、どんどんと募っていく。
底知れない不安に、気がおかしくなりそうだ。
自分のすべてが、警告している。
その時が、差し迫っている。
逃げなきゃ。
でも、ジェイドは、裏切りたくなかった。
「ラピス、ゆっくり、大事な話がしたい。」
そして、ゆっくり頷いてしまった。