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天気は、曇り。
ううん、今にも泣きそうな、空。
行かなきゃいけない所が、ある。
そう思ったのはずっと後で、外に出たら自然と、足が向いていた。
道なんて知らない。
分からない。
ただ、何となく朝外に出て、ふらふらと歩いていたら、辿り着いた。
気が付いて、周りを見て、悟った。
無意識に歩いていたけど、下に下がり続けていた事は感じていた。
景色は変わり、人の気配の消えた、遺跡の底。
未だ濃い霧の立ち込める、肌寒いとさえ感じる、春先の朝。
霧のせいで、空は見えない。
朝方、朝市の始まるにはまだ早い時間帯。
ここに、滅多に人など通らない。
少し行けば、孤児達の住まうスラムがある。
何も変わらない。
まったく同じ。
あの時も、自分はここにいた。
同じ、全部同じ…。
違うのは、天気だけ。
誘われるようにして、少し開けた場所に来る。
あぁ…
あぁ…
中心へと足が動く。
毎日、自分はこうしていた。
毎朝、飽きる事なく見上げていた。
毎回、がっかりしていた。
ここは遺跡で唯一光がまともに射す所。
でも、絶対に、空だけは見えなかった。
それでも、毎朝欠かさずここへきて、朝日を肌に感じようとしていた。
それに、空は見えずとも、天気は把握できるから。
あの時も。
中心で、足が止まる。
何事もなく、今まで何も無かったかのように、何の違和感もなくそうしていた。
息を吸って、空を見上げたんだ。
白い、白い、白い世界。
ここに居るのは自分だけ。
誰にも邪魔されない、自分だけの、何も無い世界。
あの時も。
また一つ、思い出した。
何も変わってない。自分でさえも。
(このまま、世界から忘れ去られてしまいたい。何事も、無かったように。)
変わらない、唯一、それが自分と言う存在の、唯一不変であり続けた小さな願い。
変わる事の出来なかった、叶わぬ願い。
そうすることは、最愛の人に奪われてしまったから。
まったく同じ。あの時と。
でも、一つだけ違うんだ。
ポッと、冷たい雫が頬に当たった。
天気は曇りじゃなくて、雨に。
泣きそうな空から、泣いている空に。
あの時は、晴れだった…。
始まりの、場所。
帰ろうかな、そう思った時に、声が聞こえたんだ。
とても優しくて、低くて落ち付く、あの声が。
初めて、呼んでくれたんだ。
あの時…。
…聞こえない…。
今は、聞こえないんだ…。
どんなに耳を澄ませても、どんなに待っても、自分を呼ぶ声が聞こえない。
空が晴れなら、聞こえたのだろうか。
それ程に、今にでも聞こえそうな、何度も何度も、何度も恋い焦がれたあの声色。
ほら、聞こえるでしょう?自分を呼ぶ声、が…
「……―。」
目を開いても、視界に映るのは白い世界。
降り始めの雨が、自分を現実に引き戻す。
聞こえる訳がない。
だって、あの人は自分の前から消えてしまったから。
…いっそ、ずっとここに居てしまいたい…。
もう、探すのは疲れたから。
あの人なら、また、自分を見つけてくれるんじゃないかな?
…結果は、分かってるよ…。
もう行こう。
ここに居ても、何も無い。
もう一度、これが最後のチャンスとばかりに、意識を白の世界へと溶け込ませた。
「ラ、ピス…?」
あぁ…、お願い神さま、嘘だと言って。