忍者ブログ
プロフィール
HN:
ラピス・フォグス
性別:
女性
職業:
道化師
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新CM
[05/09 真里]
[01/16 霧]
[01/14 ディアの後ろの。]
[09/16 ……紅、白…。]
[09/01 白い人形師の同背後で名前の明かされていない赤い文字の男]
ブログ内検索
フリーエリア
アクセス解析
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


目の前にあるのは、一冊の本。
タイトルには堂々と、大きく書かれた文字。

『絶品料理百選!』

ついにこれを使う時が来た。



絶対に、見返してやる。絶対に。




別に、料理が苦手な訳じゃない。
でも、だからと言って得意でもない、と言うだけだ。
事実、自炊はちゃんとしてる。
不思議な事に、ちゃんと作ろうとすればするほど、事故につながる可能性が高くなる。
そして何故か、奴が絡むとその可能性が飛躍的に上がる。

私は奴に呪いでも掛けられているのだろうか?

だからこそ、今回はちゃんと作ってやる。
本まで頂いたのだから、作れない訳がない。
この日のために、使った事の無いエプロンまで買ったんだ。
エプロンなんていらないと思ってたけど、今回は違う。
だって、この本の第1章3P目に書いてある。「―エプロンはきちんと着用しましょう。」
やっぱり、お菓子を作るには形から入るのも大事らしい。


何を作ろうか…。


ふと思い出して、焼き菓子のページを、開く。
項目は、

『マフィン』

生まれて初めて作ったお菓子。
兄さん、姉さん達に教えてもらって、必死に作ったお菓子。

それを奴は、鼻で笑った記憶がある。

それからも、奴はことごとく不味いと言い続け、
私も回を増すごとに、芸術性の高いお菓子が出来あがる。

これを、呪いと言わずしてなんと言おうか。


「よーし、材料も全部計ったですし、次は混ぜるんでっすね。」

『みゃーご』

「ふえ?」

声のした方を振り向けば、空いた窓に座る猫。

しまった、あけっぱなしだった。

思わず猫を見つめると、バチッと目が合ってしまった。
とたんに走る、悪寒。
キラリと、猫の目が光ったように見えた。

『みゃーご!』

「へ?わ、ちょ、ちょっと待つです!こっちに来てはダメ…わー!!」

予想は的中。
猫はテーブルへと…材料のひしめくテーブルへと、見事に飛び乗った。

どんがらがっしゃーん。

目の前が、のどが、髪の毛が、全てが粉っぽくなるのを感じる。
どうして、どうして…

「どうしていっつもこうなるでっすかー!」

思えば、いつも何か邪魔が入る。
あり得ない事に、カラスが窓を突き破って入ってきた事もある。
自分がお菓子を作ると、何かが起こる。

『みゃーご、みゃーご』

傍らでは、粉の上でゴロゴロする猫が。
粉の所為で、最早毛色も分からない。

「…は…ー…。」

ため息しか出ない。




拝啓、人形師サマ。


ご機嫌麗しゅう人形師サマ。如何お過ごしでしょうか?

今宵は満月、16年最後の夜は一体どのようなお気持ちで??

また1年、何事もなく過ぎて行きました。結構結構。

風の噂でお聞きいたしました。猫を買いになられたようで。

貴方さまが…、かの”偉大”なる人形師サマが猫を御飼いになるとは…、興味と嘲笑と心配で、一杯にございます。

もうすぐ、月が落ち始めますね。17年目の夜、貴方さまは何を思い始めますか?

今年も、何事もなく過ぎて行ければお互い幸せと言うものです。

人形師サマの”シアワセ”を月に願い、カンシャと捻くれとアザケリを込めて。


敬具 ―――。








また廻る運命、貴方さまと交わらぬ事を祈って。






PR
COMMENT FORM
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
PASS
COMMENT
Un Buon Compleanno …―Celestine HOME 温かな前線