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ラピスラズリ(lapis lazuli) :
方ソーダ石グループの鉱物である青金石(ラズライト)を主成分とし、同グループの方ソーダ石・藍方石・黝方石など複数の鉱物が加わった類質同像の固溶体の半貴石である。
深い青色から藍色の宝石で、しばしば黄鉄鉱の粒を含んで夜空の様な輝きを持つ。
「―ラピスラズリ・フォグス…。霧の中で見つけた、青金石…―」
男は少女をこう呼んだ。
ポカンとする少女に微笑みを浮かべ、さぁ行こうかと立ち上がる。
男の後ろから、随分先へと行ってしまったジェイドの声が響き渡る。
「おい!おっせーよ!早くしろー!」
ははは、と笑って、
「じゃぁ、行こうか。」
少女を促し、少女もまた、何事も無かったかのように、男の手を引き歩き出した。
さっきの出来事など無かったかのように、少女はもくもくと歩みを進める。
随分と先にいたジェイドも、道が分からずに今は随分と後ろを歩いている。
静かな時間、男は聞こえるような聞こえないような声色で、誰に対してなのか言葉を吐き出す。
「僕はこの世界が大嫌いなんだ。」
泣きたくて切なくて壊したい位に、この世界が気に入らない。
そんな、悲鳴に近い言葉遊びを、手を引かれながら男は囁く。
少女も、男の悲鳴を最初で最後に受け止めた。
きっと傍から見たら温かなひと時。
見る人にとって、それが少女にとって理解できるかどうかなんて、どうでもいい事。
少女と男にしか、真意は解らない。
やがて本当に静かになって、聞こえるのは靴の踏みしめる音だけになった。
風、も吹いている。
(吹いている…?)
男が上を見上げれば、そこには懐かしく感じる”空”があった。
遺跡の中では殆ど感じる事の出来なかった風が、肌に感じる事が出来ている。
それはつまり、
「で、出口だぁぁぁ!!!」
ジェイドがこの坂道を、駆け上がっていく。
随分と空が懐かしく感じる。そんなに長い時間迷っていたのか?
男はちょっぴり、自分の不甲斐無さを感じてしまう。
そして一抹の不安が…。
多分、これだけ長く自分が姿を現さない訳だ、他の団員達も…。
とある情景が目に浮かんで、一人悪寒を走らせる。
少女の歩みは相変わらずのペース。それでも、ゴールはどんどん近付いてきた。
見憶えのある所に出た時に、先に行ったジェイドの、「ぎゃ!」と言う声が聞こえてきた。
嫌な予感は確実になった時、ついに遺跡の出口へとたどり着いた。
「着いた。」
そう、短く少女は言った。
そして、
「プージ!」
聞き覚えのある、今一番会いたくない人の声がした。
自分をプージと呼ぶ人物は数少ない。そしてこのイライラとした声色。
「ア、アゲート…!」
男は声のした方へ向くなり、その声の人物を見て「げっ」となる。
男の元へと近寄る、アゲートと呼ばれた人物。
背丈は男と大して変わらず、体格は細いがしっかりしている。
男より年齢は上なのか、白髪の混ざり始めた髪をしっかりと整え、服装もきっちり、無駄がない。
見るからに厳格な雰囲気を醸し出しているその人物は、男の務めるサーカスの副団長。
男がアメなら、アゲートが鞭と言ったところか。
「プージ!今まで何をしていた、明日は大事な移動の日だろうに!」
予想通り、大変ご立腹のようだ。
テントに戻ったら説教だなこれは…と覚悟を決める。
「曲がりなりにもサーカスの団長が…、一体どうしたんだい。」
はぁ…と、どうやら怒りを通り越し呆れているらしい。
後ろを見ると、他のサーカスの団員達も集まって来た。
「あー…、ちょっとジェイドの探し物を一緒にだね…」
「それは知っている。私が言いたいのは何故誰にも言わずに2人で行った!」
ああ、なるほど、だからさっきジェイドの悲鳴が聞こえたのか…。
多分ジェイドのさっきの悲鳴は、アゲートにげんこつでも食らったのだろう…。あれは痛い。
そのジェイドは、さっさと皆に合流し…赤髪の少女に首根っこを掴まれて…
(あ、殴られた…)
「プージ!」
「え、あはい!」
「はぁ…ったく…。……ん?その子はどうした?」
溜め息をつき下を向いたアゲートに、ようやくその姿が目に留まる。
「ああ、この子、この子のお陰で戻ってこれたんだ、道案内を頼んでね。」
男も繋いでいた手をようやく離し、ありがとう、とお礼を一言。
「…お前はまた…。こんなに小さい子に道案内を頼むほど頼りない男だったか…」
「…本当に複雑な遺跡でね…。」
会話の内容を聞いて、少女は自分の役目が終わった事を理解した。
ここに居ても大して意味がない、また下に戻って食べ物を探さなくては…。
「プージ、急げ、お前さんの荷物がまだ全然片付いてない。買い出しも行って無いんだ。」
「あ、ごめんごめん、そうだった。」
少女はくるりと向きを変え、今来た道を歩き出す。
「あ、おい、いいのか?あの子にお礼位したらどうなんだ?」
行ってしまう少女に気が付いたのか、アゲートが促す。
が、男は違うところに食いついた。
「え?お礼も何も、あの子は連れて行くよ?」