「オラ!それ終わったらこっちだ!」
うるせーな。
毎日毎日こき使いやがって。
自分は酒飲み店で客相手。
オレっちは肉体労働かよ。
ふざけんな。
「はぁ~、今じゃ立派に親孝行してるねぇ~」
「はっ、まだまだケツの青ぇガキで仕事1つまともにこなせやしねぇ。
タダ飯喰らいだ。」
黙れ。
勝手に拾ったのはそっちだろ。
「おっせーぞソア!いつまで油さしてんだコラァ!
とっとと配達行きやがれぇ!」
ゴンッ
あんの糞ったれ親父め、鉄くず投げやがった。
「痛ってーんだよクソ親父!完璧に油させっつたのは親父だろーが!」
ああムカツク。
これほど癪に障る奴はいねぇ。
いつか、引導を渡してやる。
「んだとこの腐れ息子め!」
でも、そんな親父に、不思議と笑みが零れる。
こんなオレっちが、息子だとよ。
あったはずの時間に、未練はない。
今のオレっちには分からない。無意味だ。
突然親父に拾われ生かされた。
拾われ生かされた分、精いっぱい生きようと思う。
だから、だから簡単に死ぬんじゃねーよ親父。
テメーに引導渡すのはオレっちだ。
歳はハンデ、怪我しねぇよう店番してろ。
代りに全部引き受けてやる。
いいか親父、覚悟しとけよ。
この巣の居心地が悪くなった時が、引導を渡す時だ。
「行って来る。」
「おお。」
カランカラーン
(ドアのベル)
頼む親父、仕事中に酒はやめてくれ。