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ラピス・フォグス
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力が欲しいと切に願う。
それは絶対的な力とか、対抗するための力とか、そんな複雑なものじゃない。
もっと単純な、
今の自分の、大切な物を守れるだけの力が欲しい。
このままだと、失ってしまう気がして恐怖に襲われる。
分かるのは、自分に力が無くて、過去に大切な物を失ってしまった喪失感。
幸せ、だけど、何ものにも埋めがたい穴が、自分の中に永遠と風を通してる。

力が欲しくてたまらない。
せめて自分の大切なものだけでも、守れるように。
今でも襲われる、形の無い不安の渦。
だから必死で、
人も殺すし、人を助けるし、人を傷つけたり、人を守ったり。
今の俺は、そうして出来ているから。
そうじゃないと、生きられなかったから。
失ってしまったら、オレっちは、俺は…。

「       」

傷ものなんて言わせない。
傷があるから弱いだとか、認めない。

今の自分の物を守れないで、何がぬるま湯につかれだとか糞喰らえ。
自分の物は自分で守る。

力が、欲しい。



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※かなり長くなります、ご注意!※




目を開けると、そこは箱の中。

ここが何処だか、いつなのか、全く分からない。

分かるのは、俺が俺自身だと言う事だけ。

目に付くのは一面の赤、光のモノクロ。
宛ての無い記憶を頼りに、これが血だと言う事がかろうじで分かる。
光の加減で、今が夜だと、音を頼りに、雨が降っているとだけが分かる。

それはほんの一瞬で、すぐに俺が俺自身へと覚醒する。

(痛い)

全身に走る痛み。全身にある、致命傷では無い無数の傷。
返ってそれが痛く苦しい。流れ出る血、少量ではあるものの、止まらない。

(痛い)

身体が動かない。
動かないから、目を動かす。
瞳に映ったのは、

知らない
知らない
知らない子供

俺より小さな子供を抱きかかえ、扉の前で倒れる
2人の前に、斧を持ったまま倒れ伏す
3人とも、死んでる。3人とも、真っ赤にに染まっている。

(痛い)

何故か、胸の奥が酷く痛い。
俺は、泣いているのか…?何で、泣く?視界が歪んで、良く見えない。
全身が痛くて、思考がよく回らない…。

『~~!!!~~っ!!!!!』

うめき声が聞こえた。
分かっていた、とらえていたはずなのに、今まで存在しないとばかりに振るまっていた俺。
顔を向けると、何かがいた。

分からない、分からないんだ。

何かが確かにそこにいる。
光も当たり、姿も見えている。
なのに、分からない。
確かに、俺はそれを見たんだ。酷く頭に焼きついている。
でも、見ようとすると、分からない。靄がかかる。歪む。

カタカタと、体が震えている。

(怖い)

それだけが、俺の中に渦巻いている。何で…

『っ…~~!!~~っ~~~!!!!』

人間ではない。
うめき声もあるが、不確かな確信。
見えない中で、巨大な爪がある事が分かる。
動くそれには、生々しく血がこびりついている。

(怖い)

頭の中に響く、警告音。
そこにいる何かは、確実に俺を向いている。
見えない、理解出来ていなくとも、何故か頭が分かっている。
次は

(殺される…!)

身体が凍ったように、動かない。動けないでいた。
ここで逃げたら、この人たちを置いて行く事になる。そんなこと、俺には出来ない。
…なんで…?

『!!…っ~~~!!!』

何かが動く気配がした。
爪を床にこすりつけ、今にも飛びかかる寸前だ。

何もできない


目の前に、巨大な爪が振り下ろされるのが見えた。

≪ソア!逃げろぉぉ!!≫
≪ソアァ、逃げてぇぇぇ!!≫

まるで、身体に電気が走ったようだった。
爪の襲いかかる瞬間、とっさに身体を捻る。
俺を通り越して、戸棚に直撃する何か。今だ、逃げなくちゃ…。
体勢を立て直して、足を踏み出したとたん、腹部に走る鈍い痛み。

当てた手に感じる、生温かい感覚。

いつも見ているはずなのに、何故か、恐怖を感じる俺。手が、震えている。
これじゃ走れない…。血が、止まらない…。
(痛い、痛い、痛い。死ぬ…)
恐怖が俺を襲う。ふと、倒れた3人が目に入る。
次の瞬間、俺は走りだした。


走って、走って、無我夢中で走って、もう、何が何だか分からない。
痛い、苦しい、辛い。
俺は最後に、3人を見た。
3人とも切り裂かれ、所々、パーツが無かった。
部屋を出る時、名残惜しむかのように顔を見た。一瞬でも、心に刻むように。
頭に響く、声。
≪ソア、逃げて!!≫
涙が止まらない。顔が歪む。なんでこんなに、胸が苦しいんだ…。

何かは追って来ているのだろうか。
追われる事を恐れ、入り組んだ路地を走り続ける。
天気は最悪だ。土砂降りの雨。
腹部の傷が痛い。走っているせいか、血が止まらない。
雨と相まって、体の体温が奪われていく。意識が、薄れていく…。
自分は死ぬ、そう思った。

空が煌めき、引き裂くような音がする。雷だ。
でもその他に…、何か、聞こえたような…。
気を取られた瞬間、躓いて転んでしまった。

(やばい…、体が、動かない…。)

血を流し過ぎたと思った。
腹部の痛みも遠のき、全身の感覚が無い。


薄れていく意識のなか、涙だけは止まらなかった。
目は開けていくのに、黒く塗りつぶされていく世界。
記憶の錯綜が激しくて、何が何だか分からない。

俺はこの時、何を思ったんだ?

『…と……さん…、…ぁ…さ…ん……、っ……。』

今、なんて…?

やがて、視界全体が真っ黒になった。



そうすると、視点が変わる。

俺は俺の横に立っていて、背丈の違う格好をしている。
目の前の俺は、虚ろな目をして、息も絶え絶え。意識は多分、もうないだろう。
すると、男の声が後ろから聞こえた。

『なんだ!?モンスターの次は子供かよ!?
あん?…おい、怪我してんじゃねぇかよ!大丈夫か!?しっかりしろ!!』

そう言って、男は子供の俺を抱きかかえた。

『生きてるか!?おいしっかりしろ!!名前は!?お前名前は!?』

必死に語りかけられる俺。
何か言えよ…。そう思った時、最後の力を振り絞って、子供の俺は呟いた。

『……ソ…ア………。』

『ソアだな!?待ってろ、今助けてやるからなぁ!!』

男は子供を抱きかかえ、雨の中去っていった。
立ちすくむ俺は何も出来なくて、ただそこに立ちつくすしかなかった。

そしていつもここで、真っ暗になる。



▼△▼△▼△▼△▼△▼




汗をかいて、寝苦しくて、目が覚める。

外を見れば、まだ夜の明けきってない中途半端な時間。

胸の動悸が妙に激しい。

ああ、またいつものあれか。


ある日、俺は親父に拾われた。
訳はよく知らねぇ。思いだそうとしても、何も分からねぇ。

取りあえず、親父と生活するようになってから、偶にこんな日がある。

多分、夢を見てるんだとは思うが、覚えてない。
目が覚めると忘れちまう…。
残るのは、全身の倦怠感と酷い疲れ。
偶に、腹に出来た謎の傷も痛む事がある。それだけさ。

理由は分からない。
偶にとは言え、何年も悩まされ続けた。もう慣れた。

まだ朝までかなり時間がある。もうひと眠りといく事に決めた。
布団の中で寝がえりをうち、仰向けになる。
汗が酷いが、まぁいいだろう。腕を額にあて、ボソっと呟く。

「腹いてぇ…。」

今日は最悪だ、傷が痛む。




晴れでも曇りでもない、曖昧な天気。

仕事が終わって、帰宅。今日は何となく、いつもより気だるい。

(…帰って寝るかな…。)

珍しく下道をぶらぶら。鳥だって、時には地面を歩くさ。

ふと目に留まった、ソレ。

(……、…。)

玄関前、生まれて間もない鳥のヒナ。

(…、)

上を見つめる。

視線の先にはツバメの巣。2週間程前に、少し張り出た屋根の下に作られたのを、俺は知っている。

(…落ちたのか。)

興味本位で巣を覗いた事がある。

その時は確か、卵が4つ。

(あと3羽か…。)

今日の時点で、孵化した卵は2つ。うちの1羽。


(…、…。)

いつもなら、それでお終い。何もないさ。

天気がそうさせたのか、疲れのせいか、ヒナの前にしゃがみ込む、今日の俺。

(…死んだのか?)

見続けても、一向に動く気配の無いヒナ。

まだ目すら開いていないヒナは、小さいながらも、静かに死の匂いに包まれていた。

ふーっ。

長く、呼吸を思いだすかのような溜息。次には、小さな鳥を両手ですくい上げていた。

立ち上がり様、空を見上げると、向かいの家の屋根に鳥が留まっていた。

多分、親鳥。

ヒナを失った悲しみに暮れているのか、ただ住処の前に立ちはだかる人間を疎ましく思っているのか、ヒナを持つ俺を、見続けるツバメ。

(…、……。)

そっと、俺はヒナを抱えて裏庭へ向かった。

隅に在りながらも存在感を放つ、大樹とはまだ呼べぬが、苔むした木。

向かい様にスコップを拾う。

俺はヒナを、木の根元に埋めてやった。少し土を盛って、近くに落ちていた枝を突き刺す。簡単な、墓とも言えぬ墓。

ただそれだけさ。


2日目。

また、昨日と同じ曖昧な天気。

家に付いてまず目に留まったのは、昨日とはまた別の場所に落ちていた、ツバメのヒナ。

(…、…。)

ああ、なんともないさ。

空を見上げれば、2羽のスズメと2羽のツバメ。スズメを追い掛けるツバメ。何となく、スズメが楽しげに囀りを上げている気がする。

そうか、

(落されたのか…。)

なんともないさ、これが自然の摂理。

何も考えていない頭で、体はヒナをすくい、足は裏庭へと向かう。

俺はまた、ヒナを木の根元に埋めてやった。兄だか弟だか分からない、兄弟の隣に。

…それだけさ。


3日目。

少しだけ、雲の切れ間に日がちらつく、そんな天気。

家路につけば、昨日とはちょっと違った、それでも変わりないものが落ちていた。

(…、…?)

よく見れば、小さな命がもがいていた。

(孵化したのか…。)

残りの卵の、生き延びたヒナ。

少し離れた道路わきを見ると、ツバメとは違う、血の付いた茶色の羽根が落ちていた。

疲れた体に考えない頭で、昨日とは違い、ヒナをすくっては、屋根の隙間へと両手が伸びていた。

ああ、何をやっているんだろうか、俺。


4日目。

少し、雨の降りそうな空模様。

速足に家路につく。

玄関前に落ちていたのは、ヒナではなかった。

黒光りする、太くて大きな鳥の羽根。

ふぅ。

…ため息は出た。ただそれだけだ。

無心のハズの俺は、次には梯子を持っていた。途中、何故か親父に「そんな面してどうしたぁ」と言われた。

巣を除けば、未だ孵化をしていぬ卵が1つだけ。

(…、……。)

何も言う事はないさ。所詮、これが弱肉強食。仕方のない事だ。

降りて空を見上げても、親鳥の姿を見る事は出来なかった。


5日目。

よく晴れた天気。

いつもより早く仕事が終わった。

帰って来て玄関先を見ても、何も落ちていなかった。

何となく気になって、巣を見上げる。

何の変わり映えの無いツバメの巣。親鳥の姿も見えない。

あの卵は孵ったのだろうか?

そしてまた、日はめぐる。


あの日以来、俺は親鳥の姿を見る事は無かった。

残った卵も、いつの間にか消えていた。

多分、生まれるまでもなく、次の別の命へと紡がれたのだろう。



なんともない。ただそれだけさ。所詮これは自然の摂理、弱肉強食の世界。


鳥だって、魚だって、例外もなく人だって。

なんともないさ。仕方のない事だ。何も言う事は無い。

ああ、これだからこんな天気は嫌なんだ。

晴れでも曇りでもない、曖昧な天気。

「いってぇ…。」

脇腹に出来た、傷が痛む。





「オラ!それ終わったらこっちだ!」

うるせーな。

毎日毎日こき使いやがって。

自分は酒飲み店で客相手。

オレっちは肉体労働かよ。

ふざけんな。

「はぁ~、今じゃ立派に親孝行してるねぇ~」

「はっ、まだまだケツの青ぇガキで仕事1つまともにこなせやしねぇ。
タダ飯喰らいだ。」


黙れ。

勝手に拾ったのはそっちだろ。


「おっせーぞソア!いつまで油さしてんだコラァ!
とっとと配達行きやがれぇ!」




ゴンッ



あんの糞ったれ親父め、鉄くず投げやがった。

「痛ってーんだよクソ親父!完璧に油させっつたのは親父だろーが!」
 
ああムカツク。

これほど癪に障る奴はいねぇ。


いつか、引導を渡してやる。




「んだとこの腐れ息子め!」



でも、そんな親父に、不思議と笑みが零れる。

こんなオレっちが、息子だとよ。



あったはずの時間に、未練はない。

今のオレっちには分からない。無意味だ。


突然親父に拾われ生かされた。

拾われ生かされた分、精いっぱい生きようと思う。



だから、だから簡単に死ぬんじゃねーよ親父。



テメーに引導渡すのはオレっちだ。

歳はハンデ、怪我しねぇよう店番してろ。

代りに全部引き受けてやる。

いいか親父、覚悟しとけよ。

この巣の居心地が悪くなった時が、引導を渡す時だ。









「行って来る。」              
「おお。」










カランカラーン
(ドアのベル)








 
頼む親父、仕事中に酒はやめてくれ。















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