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未だ深い霧が立ち込めている、遺跡の底。
陽の光が差し込んでいて、幻想的な白い世界。
「白き世界の狭間にて、終わりと始まり、
道化の矛盾と輪廻の道筋の果てに、希望の原石に出会う―…」
そう、今の情景を男なら口にするかもしれない。
「君に名をあげよう。」
その一言が、ゆっくりと世界に沁み込んで行き、一つ一つに意味を持たせ始めた。
「…ぇ…、」
少女にとって、まったく理解できない事態が起こった。
「な…まえ…?」
目の前の男は、何を言い出したのだろうか。
「そう、いいかい?君の名は…」
「いらない…」
遮る少女の声。
「名前なんて、必要ない…。このままで、いい。」
はっきりとした声だった。
でもそれと同時に、
(この子は、もう自分の行く末を分かってる…。)
例え自分に名前がついたところで、今のままでは将来に大した違いが無い事を、5歳にして理解をしていた。
(なんで、なんでこんな…)
(本当に本当に、世の中は残酷すぎて、気がおかしくなりそうだ…)
馬鹿げた思惑に、色がついて、意味をなし始める。
馬鹿げていても、無意味な思惑なんても言わせない。
これは自分の復讐でもあるのだから。
自分が世界に送る、小さな小さな花束。
いつかどこかで花開いて、小さくても、皆に伝染してゆけばいい。
これはある種の贐であって、自分の仕掛けた小さな爆弾。
男の正義は、人の世で狂気と言われる類。
誰も知らない今ここに、種をまいた。
だから、
「いらなくなんて、ない。」
静かに真っ直ぐ瞳を見据えた。
「君には必要なくとも、僕には名前が必要なんだ。」
まるで金の星を頂く天の石。
皆を導くには相応しい、希望の揺り籠。
「君の名前はラピスラズリ、
ラピスラズリ・フォグス。
霧の中で見つけた、青金石。」