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ラピス・フォグス
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不安げに体を強張らせ、声も出さずビクついている少女。

「大丈夫、何もしないから。逃げないで、話を聞いてもらえるかな…?」

そんな少女を労わるように、優しく、不安を解いてゆく人懐こそうな男の笑顔。
それが、この男の最大の武器でもある。

「…、……。」

まだ警戒はしているが、自分に危害はないと思ったのか、少女の力が少しだけ緩む。
「ありがとう…。僕の言葉、解るかな?お話、出来る…?」
今はこの子が頼みの綱だ。が、意思の疎通が出来なければ意味がない。
大丈夫だろうか…?

「…っ…。」

そんな男の心配をよそに、少女はコクコクと頷いた。
「そう、よかった!」
ほっとする男。微笑みを浮かべ、少女を下ろしてあげる。
さて、この子の分かる範囲で教えてもらおう。

…ところが、又してもジェイド…。
下ろしてもらった少女へ突っかかり、思いっきりに怒りをぶつける。
「おいコラ!さっきはよくも俺をぶっ倒したな!!
「Σ……~!!」
少女はビクッと驚き、少年から離れ…男の足の後ろへと隠れてしまった。
後ろからジェイドをビクビクしながらのぞいている。
「あ゛ー!!イライラする!何だよこいつ!!」
はぁ…。
男が深い深いため息をつく。
(まったく、この子ときたら…)
元気なのはいいことだ。だが、

ゴンッ!

「ジェイド、いい加減にしなさい!」
男だって、怒る時は怒るのだ。

ジェイドによって怯えてしまった少女を安心させるのに、暫くの時間がかかった。


 







「…っとまぁ…、こんな感じなんだ…。」
ははは…と力なく苦笑する男。
目の前には、男の必死な説得により、男に対してすっかり警戒を失くした少女がいた。
今男は、地下の遺跡群に物が落ちてしまったこと、ここへは落ちたものを取りに来た事、そして道に迷ってしまったこと全てを少女に話した。
男は少女に目線を合わせるために腰を屈め、少女は真剣な男の眼差しを見つめ返している。
「ここまで話しを聞いてくれてありがとう。そして、…君に、お願いがあるんだ。」
自分のような大の大人が、やっと物事を理解出来るようになったばかりのような少女に、助けを請うのは本当に面目ないと思う。
しかし、今そんな事を言っている場合でないのも確かだ。
(早くサーカスに戻らないとなぁ…)
少しだけ、焦る。
「お願い…、聞いてもらってもいいかな…?」
少女に確かめるように尋ねる男。
最初は首を傾げていた少女だったが、少しだけ、「コクッ」と頷いた。
「…、君にこんな事を頼むのはアレなんだけど…、さっき話したように道に迷ってしまってね…、方角だけは分かるんだが…。ここの遺跡の入口まででいいんだ、僕を、道案内をしてもらえないかな…?」
「……、……。」
迷っているのだろう、少女はちらり、ちらりと男とジェイドを見ている。
出会ったばかりの得体の知れない人間なのだから、こんな小さな少女が迷うのも無理はないと男は思った。
その僅かな時間だが、男は少女の観察を始めていた。
(改めて見ると、綺麗な子だなぁ…。特に瞳。あんな深い青を見たのは初めてかもしれない。それに、今は痩せてガリガリでボロボロだけど、顔立ちも悪くない。)
10年後が楽しみだなぁ…と勝手に想像までしている。
すると、

「…いい、よ…」

かすかだが、それは少女は発した言葉であった。
「…!ほ、本当かい!?」
「…うん。こっち、付いてきて…。」
今まで言葉を発さなかった少女が、初めて口を開いてくれた。
と言うが早いか、少女は男の手を掴みくるっと向きを変え、すたすたと歩きだした。
「え、あ、ありがとう!ちょ、ジェイド!行くよ…!」
いきなり歩き出した少女に驚きながらも、隅でふて腐れてたジェイドに声を掛け、男は付いていった。



5分位経っただろうか。
男が少女へ方向を示してから、その位が経った時のことだった。
歩く音しか聞こえない無言の中、男は少女の名前をまだ聞いてなかったことを思い出した。
「ね、ねぇ?君、名前はなんて言うの?」
歩調も同じになり、隣を手を繋ぐ形で歩く少女は、ちらりと男を見上げた。
男はダメ元で聞き返す。
「ほら、ずっと君って言うのもなんだし…。あ、まだ僕も名乗ってなかったね…。えと、僕の名前は

プージ・クリスタル

皆からはプージとかクリス団長って呼ばれてるんだ。
で、後ろにくっついて歩いてるのは…」
「ジェイドだ!」
怒鳴り声のように少年は名乗った。
「…本当はもっと良い子なんだけどね、あれは…」
ジェイドを見やり、苦笑したようにふふっと笑う男・プージ・クリスタル。

「で、君の名前は…?」

男は軽いノリで聞いたつもりであったが、後でちょっと後悔する。

少女は歩みをぴたりと止め、プージを見上げ、静に言った。




「悪魔の子。」





 

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