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「うわーん!無いっ!無いよー!!」
遺跡に響く少年の鳴き声。
「ジェイド、君は男の子なんですよ。物が少し見つからなかった位では泣くとは…」
すぐそばには、男の子を窘め、辺りを見回す男が1人。
「うるせぇジジィ…グスッ…。だって…、ここら辺に落っこちたんだもん…ズズッ」
「ジジィって…、僕はまだ37なんですが…。しかしよくもまぁ器用に落っことしましたね…。城壁から物を落っことすなんて…。」
呆れたように呟く男。それに対し、
「それより…グズッ…道は…分かったのかよ…。」
とても重要なことを聞いてきた。
「えーとー…。ここへ来るまでに随分とくるくる回ったので…。位置がいまいち…。」
うーんときょろきょろ見回す男。
それに不安を覚えたのか、少年が恐る恐る思ったことを聞いてみる。
「え…、まさか道に迷ったとか、言わないよな。」
「何を言ってるんですか。そんなのとっくの昔に迷ってるに決まってるでしょうが。」
えへん、と自慢げに胸を張る37歳サーカスの団長。これでも一応、人望厚い立派な団長なのだ。
「うぁわぁぁぁぁんんんん!!!!!!!!やっぱりぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
少年は最早、探し物の見つからない不安と、頼るべき人物が頼りがいの無い人物へとなっている事実に鳴き声をあげた。
「グスン…グスン…ズズッ…」
少年が落ち着いたのを見計らってか、男はある方向を指す。
「そうですねー。北があっちなんで、こっちですか。」
そう言って東を指す。だが、
「ジジィ、そっちは今来たほうだ馬鹿…。」
「あ、あらー?」
前途多難。これで無事に帰れるのか!?
カラン…カラカラ…
『…?』
不意に聞こえる、音。
カラカラ…
「これは…、」
極僅かにだが聞こえる、音。
この音は、石が転がるような、そんな独特の音…。
遺跡でそのような音が聞こえるはずもない。
「人がいる…?」
男の中に希望が見える。
「ジェイド、もしかしたら人がいるかもしれません!音のする方へ行ってみましょう!」
「……!」
少年の顔も、たちまちぱぁっと明るくなる。
2人は歩き出した。濃い、霧の立ち込める遺跡へと…。
「…音が止まった…」
少年はポツリと呟く。
「確かに…。でも、多分近いでしょう。それにしても、霧が濃いですねー。」
男の言う通り、霧がとても濃く立ち込めていた。
地上ではそれほど気にもしなかったが、遺跡へ下りるほど霧が濃くなって行く。今では10mも見えない濃さだ。
「うげぇ…、俺もう髪がびしょびしょ…」
少年はうざったそうに前髪をいじる。
「お…、ジェイド、少し明るくなってきましたよ。」
上を見ても霧で分からないが、光の射す場所に出たらしい。
よく見ると、限られた視界の中でも、ここが少し開けた場所だと確認できた。
ジャリ…
今度は、確実に近くで聞こえた。
霧で見えないが、ここに誰かいる…。
悪い視界の中、2人は必死に目をこらした。
そして朝日が昇り、白い世界に徐々に立体感を持たせていった。
ただ白いだけの世界から、白に透明感が宿る、幻想的な風景を創り上げていく…。
そこに、小さな、小さな影が浮かび上がる…。
よくは見えないが、見えない空を眺めているようだ。
一瞬、はっと息を呑む。
それほど、絵になる景色であった。
そうだ、道を聞きたいのだ。
そう思い、声を掛けようと身を乗り出す。
ところが、一緒に目を凝らしたジェイドにも確認できたのか、ジェイドが思いもよらない声を上げる…。